APRIL TRUE/エイプリルトゥルー 最終話/全7話

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第2話:http://coney.sblo.jp/archives/20090302-1.html
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第4話:http://coney.sblo.jp/archives/20090304-1.html
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    APRIL TRUE ~エイプリルトゥルー~ 最終話/全7話      
                              古新 舜

「すげー、おまえがそんなこと言うなんて思わなかったぜ」「何がおかしいのよ……」好きと伝えたときよりも強い恥ずかしさがこみ上げてくる。
「おまえもそんな嘘を付けるようになったか」
「何よ嘘って」
「エイプリルフールだろ?」彼は私の頭を指差す。壁掛け時計は0:10を指している。あ、過ぎてたんだ……。
「違う、違うの、だって昨日はエイプリルトゥルーって言って、本当のことを伝える日だったんだってば」私はヤケになり、自分の言っていることを整理できないまま、とにかく気持ちをしっかり分かってほしく、無我夢中でそのことを伝えようとした。
「行かないよ」「え?」
「東京には行かないよ」
 にんまりと笑う春珂の顔を見て、私は今日がエイプリルフールであることを思い起こす。
「こんなときに、エイプリルフールなんて言わないでよ!」
 怒る私を見て、春珂は一瞬キョトンとしたが、やれやれといった表情で私の腕を無理矢理つかんで、取り乱した私を二階まで連れていく。私は何が起きているのか分からないまま階段を上りきり、彼は真ん前の部屋の扉を開けた。と、そこには散らかった子供部屋が姿を見せた。
「な、こんなんじゃ引っ越せねーだろ。行くのは父ちゃんだけだ。俺は婆ちゃんと一緒に残るんだよ」
 安堵で力が一気に抜けた――。
��まるでこの現実がエイプリルフールだわ)
 脱力した私は、薄れかけた意識で彼の部屋を見た。机の上にはランドセルを背負った小さい私と春珂の写真が立てかけられていた。
「おまえ覚えてっか? 入学式のとき、うちの母さんが撮った写真だよ」
 うちの冬桜が満開の下、ブスッとしている春珂と能面のような顔をした私がいた。それを手に取ると、不意に春珂が私の背中にもたれかかってきた。
「中学入ったら、同じ写真撮ろうぜ。今度は笑った顔しよーな」
 硬直したまま私は部屋の窓から、家の方を見下ろした。縁側には予想通りにんまりとした姉の姿があった。

 今思えば、一日早い姉の嘘は『エイプリルトゥルー』ではなくて『マーチトゥルー』であるべきだと思うが、そんな英語の解釈よりもそれを自然と受け入れた、私の純粋さを心より讃えたいと思う。
 そして二十四歳、三月最後の日の今日、私はこれからもう一度エイプリルトゥルーを使ってみることにする。庭の冬桜を見ながら彼のもとへと旅立つのだ。

                          FIN

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